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2010年9月 5日 (日)

十三人の刺客 試写会感想 9月4日東商ホール

本当に素晴らしい作品、まさに本格時代劇エンターテインメント大作。

冒頭の場面がシンメトリーで美しく、曇り空が何となく不安をかき立てる。
そして屋敷の中に場面が移ると、ろうそくの明かりだけのほの暗い部屋、きらびやかではないが実に品のある映像だと思いました。

血みどろの残酷な映像が多いのではないかとの心配がありますが、実際に行為に及ぶ場面そのものは見えないです。
ただワンシーンだけ最凶の殿の悪行の結果としての犠牲者が映りますが、誰にでも分かるようなCG加工なので多分大丈夫ではないでしょうか。
勿論時代劇ですから、戦闘シーンは血糊や斬る効果音、叫び声などすさまじいですが、ものすごいスピード感溢れる映像なので余程動体視力が優れていないとハッキリ見えないのではないかと思いました。

暗い屋敷の中のろうそくの明かりと御簾越しの人影、深緑の中を進む大名行列、大雨の中を馬を駆って急ぐ一団・・・など、静と動が美しく対比して見る者を飽きさせない。
殿の悪行と13人が結束していく様を観ているうちに、あっという間に「ラスト50分の死闘」に入る。

息をつく暇もないすさまじい闘い、そしてそれぞれの最期まで、刺客達一人一人が生き生きと生きている。13人それぞれに対する監督の愛情が感じられると思いました。
若手は初々しくて可愛いし、中堅どころは凛としてかっこいい、年長組は戦力的にも精神的にも頼りになる存在。
それぞれの俳優さん達が素晴らしかったです。
窪田くんの初々しさに泣き、伊原さんのかっこよさに痺れ、頼りがいのある古田さん、松方さんの殺陣と存在感に圧倒されました。山田くんが時代劇にこんなにも合っているとは・・・美しい横顔が印象的。
伊勢谷さんの野人ぶりと一徳さんのおとぼけは男性達の笑いを誘い、気持ちが重くなるのを妨げます。
誰一人として他のキャストなんて考えられない、何だかみんなのファンになってしまいました。

我らが稲垣吾郎の殿、これは今まで吾郎がやっていた悪役とは全然違います。
観ている人の憎悪を一手に引き受け、「絶対に生かしておいてはならぬ!」と思わせてくれる。無表情で日常茶飯事のように残虐な行為に走り、恐ろしい事を口にする。
無気力、何をやっても面白くない、「むしゃくしゃした。退屈だった。誰でもよかった」という言葉が浮かびました。
「何があっても殿をお守りする」という鬼頭半兵衛が鬱陶しくてたまらない感じ、小さい子どもが自分を構う母親に反抗しているようにも見えました。
と思うと、突然「生きる事」について哲学的な事を口走ったり、頭が良いだけに手に負えない。そんな残虐な殿ですが、さすが佇まいは気品に溢れ声が美しく乗馬姿も品がある、どこから見ても「殿」でした。
この映画における殿の最後のシーンは本当に無様です。体中顔中泥だらけになってファンでさえ顔が分からない位に。
だから、声を大にして言いたいです。
これは決して「美味しい悪役」ではありません。
だからこそ、この役をやりきった吾郎に心からの拍手を送りたいし、ファンとして誇りに思います。

こんな殿を命をかけてお守りする鬼頭を演じる市村さんが素晴らしいです。
時代劇もこんなにも嵌るんですね。舞台をやっている方は時代劇にも向いているのでしょうか。鬼頭が市村さんで良かった!と心から思いました。

そして、役所さん。
何回か見せてくれた役所さん演じる新左衛門のふとした笑顔、これがあったからこの物語が悲壮にならなかった気がしました。
もしかしたら、これは役所さん自身が持っている人柄なのでしょうか。
役所さんの確かな演技力が最後までこの作品をぶれないものにしたのだと思いました。

そして、三池監督。
素晴らしかったです。
余分な所は省き場面がサクサクと変わっていくのですが、観ていて快感なんです。
見終わった後に「品があっていい。媚びた所が無い」と話し合っていたのですが、キネ旬のインタビューに「今回は女性に媚びる必要が無かったので精神的に解放された」というような事が書いてあって、やはりそうだったのかと嬉しく思いました。

作品を観て一番に思った事は、すべてにおいて1本芯が通った作品だという事。
何の迷いもなくラストに進んでいくので観ていて気持ち良かったし、悲惨ともいえる結末にしては心が落ち込むような終わりではない。
やり遂げた達成感とひとすじの希望の光が見えたような気がしました。

またすぐに観たくなりました。
自信を持って薦められる映画です。(余程、血がダメだという方を除いては)
この時期、時代劇映画が活気づいて日本という国についても新たに見直して欲しいと心から思いました。

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吾郎映画」カテゴリの記事

コメント

サイトーさんに試写会に行って頂けて本当に良かったと、
心から思える素敵なレビューをどうもありがとうございます!

刺客13人それぞれの個性が愛情持って描かれているなんて感動です。
我らが殿、そしてその殿に忠誠を誓う鬼頭も素晴らしいとのこと!
いま映画公開が待てないくらいに期待が膨らんでいますv

投稿: ペコ | 2010年9月 6日 (月) 01時13分

試写会の感想ありがとうございました。
さすがの表現力で興味深く読ませて頂きまして、この作品への期待感が高まりました♪

本当はもう一つのネタバレ感想の方にコメントしようかと思ったのですが、こちらには市村さんについても語れていたので、吾郎ファンでもあり市村ファンでもある私は過剰なまでに食いつきます(笑)

市村さん演じる鬼頭半兵衛はオリジナル版で一番感情移入して観たキャラクターだけに、今作品は涙無しには観られないんじゃないかと思ったと同時に、本格的な時代劇作品への出演経験が無くミュージカルを得意とする舞台役者の市村さんが一体どこまでこの作品の世界観にハマれるのか?という不安もありました。
「キネ旬」のインタビューでも「この顔では髷は似合わないだろう」と認めていたくらいでしたから(笑)

しかし、サイトーさんの「時代劇もこんなにも嵌るんですね。舞台をやっている方は時代劇にも向いているのでしょうか。」を読んで、おお!そんなにもハマッているのかぁ!!と嬉さが一気に込み上げてきました♪
市村さんはオリジナル版で九十郎を演じた西村晃さんの付き人をしていたので、やはりこの作品に対しての意気込みは半端ではなかったですね…。ちょっと感無量。

そんな市村さんと常に対になっている吾郎が演じる斉韶。
期待以上の存在感と凶悪ぶりのようで、それでいて美しさも狂気も残忍さも、そして無様さも体現しているという凄さだなんて…「明日にでも劇場公開してぇ!」と叫びたいくらいに待ちきれなくなってます!!

観る前にあまり期待値は上げるものではないと経験上嫌でも判っていますが、サイトーさんの感想を読んでしまうと…下げろという方が無理でございます(笑)

投稿: ななんぼ | 2010年9月 6日 (月) 01時17分

サイトーさま

素晴らしいレビューありがとうございます。さすが数多くの映画を常日頃観ていらっしゃるだけあってその情景が伝わってきます。関係者の試写に始まって一般試写の感想を数多く読むにつけ、この作品ほど監督、キャスト、作品全体に対する評価が高いのは珍しいなと思いました。脚本、演出、役者一人一人の演技の見事さが集結して出来上がった作品なのが、サイトーさんの感想でもよくわかりました。殿の演技によってこの作品の出来が左右される・・・13人の刺客が決起する大義名分を見ている側に納得させなければならない大役を、吾郎さんがどのように演じるか不安と期待でいっぱいでしたが、ものの見事にやり遂げたようでファンとして本当に誇りに思います。この作品に参加した全ての役者さんに作品や、役に対する想いを聞いてみたいですね。今月号の「キネマ旬報」のように・・・。益々観るのが楽しみになりました。

投稿: さやか | 2010年9月 6日 (月) 01時17分

はじめまして。リーダーファンで5スマ好きのいがと申します。

昔から、ごろちゃんと剛の出演する作品がドツボで(ごろちゃんに至っては、彼が勧める映画はほぼ私と好みが同じなくらい(笑))、つかさんの舞台も見に行きました。

スマさんたちには、三池さんの映画にいつかがっつり出てほしいなあと願っていて、特に上二人は大好きな世界観だろうし(案の定クローズゼロにどはまりしていておかしかったですが)、ノワールものが結構好きなごろちゃんもきっと合うだろうなとぼんやり祈っておりました。
それがまさか、こんなに役者としてやりがいのある良い役で叶うだなんて…!しかも私が昔から大好きな役所さんはじめ、媚のない実力派の俳優さんに囲まれて、さらに私が大好きな骨太で男性向けの時代劇アクションで叶うなんて…!!

何より彼らにとって良かったなと思うのは、こういったイケメンアイドルが避けるような役こそやってほしかったと、ごろちゃんファンの皆さまが大喜びされていることです。アイドルではなく、役者さんとして認められたいとこつこつ頑張ってきた彼らには、興行第一よりも、見た人の記憶に永遠に残る、役者としてやってよかったと思える、筋の通った映画にこそ出ていただきたいなと思っていたので。そういう路線をファンが応援しているというのは、きっと彼らにとっても励みになるに違いないです!僭越ながら、ごろちゃんファンの皆様に拍手です!

本当に公開が楽しみでしかたありません。おそらく何回も見に行ってしまうと思います(笑)。こちらの感想を読んでまた楽しみになってきました。どうもありがとうございました!

投稿: いが | 2010年9月 6日 (月) 10時41分

コメントありがとうございます。
読み返してみると、まだまだ書き足りない事がたくさんあります。それくらい、見終わった後でいろいろ語りたくなる映画だという事です。

horseペコさま
刺客それぞれの描き方が足りないという意見も時々見られますが、旧作に比べると見せ所は分かりやすいし泣かせてくれます。監督の愛情を感じました。
巷の評判で予想していたよりも殿の出番はそれほど多いわけではなく、それだけインパクトが強かったのだな、とほくそ笑んでいます。

horseななんぼさま
ダラダラと長文を読んで頂きありがとうございます。無料で観せて頂いたので一生懸命宣伝しました(笑)。
私は映画を観た後でキネ旬を読んだ訳ですが、とても内容が濃い永久保存版の記事でしたね。皆さんの映画に対する熱い思いをいろいろなシーンや俳優さん達の表情を思い出しながら読みました。
市村さんと吾郎が口をぽかんと開けて、松方さんの殺陣を見ていたというエピソードは可愛くてたまりません。そんな市村さんと吾郎ですが、映画の中での半兵衛と殿との関係は見ていていろいろな思いで胸が熱くなりそれだけでも見応えありますので、お楽しみに。
と、またハードルを上げてしまいました。
またご一緒に「十三人の刺客」を熱く話すのを楽しみにしています。

horseさやかさま
まずこの作品を見終わって、脚本・監督・役者・スタッフのすべてがこれ以上ない組み合わせで揃った「ロイヤルストレートフラッシュ」という言葉を思い出しました。
一日も早く、たくさんの方に観て貰いたい思いでいっぱいです。
殿に関しては見事にその役割は果たしたと思います。つまらなそうに残虐の限りを尽くす殿を見た後で、去年の夏の「笑っていいとも」での充実した吾郎の表情を思い出し、この作品に参加した事でものすごく大きなものを得たに違いないと嬉しくなりました。

horseいがさま
はじめまして。
リーダーファンの方にいらしていただけるなんて光栄です。すでにしっかりと司会者として確立されているリーダーの仕事ぶりはいつも感心しながら見せて頂いています。
20年以上アイドルとして新しい道を切り開いてきたSMAP、そろそろ大人として独自に納得のいく仕事が出来るようになるといいですね。
「骨太で男性向けの時代劇アクション」が大好きないがさまでしたら、絶対に気に入って頂けると思います。
ご覧になったらまた是非感想を伺いたいです。

投稿: サイトー | 2010年9月 6日 (月) 23時03分

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